第1条  <9 頁>
杉本博司
「昭和天皇」
ポートレート
1 9 9 9

149.2 × 119.4 ㎝
©Hiroshi Sugimoto
「劇場」「ジオラマ」「海景」などの作品で世界的評価を得る杉本博司。本作は、英国マダム・タッソー蠟人形館の人形を撮影した「ポートレート」シリーズの1作品。[時間]を重要なテーマと位置付ける杉本の厳密なコンセプトと撮影技術が、象徴の意味である[抽象的なものを表す具体的なもの]を具現化した。
第2条 <11 頁>
大森克己
「沖縄県コザ 2004年」
2 0 0 4

31.7 × 21.2 ㎝
©Katsumi Omori
代表的な写真集に『encounter』『サルサ・ガムテープ』『すべては初めて起こる』などがあり、90 年代から現在に至るまで写真の最前線で活躍し続ける大森克己。写真集『サナヨラ』(愛育社)に収められている本作は、沖縄県沖縄市(旧コザ市)にある国内最南端の銭湯「中乃湯」の裁縫部屋にて撮影されたもの。
第3条 <13 頁>
石元泰博
「桂離宮 松葉型襖引手(楽器の間)」
1 9 5 3 - 5 4
24.5 × 19 ㎝
高知県立美術館所蔵

©高知県, 石元泰博フォトセンター
アメリカで生まれ育ち、第二次世界大戦中の日本人収容所収容経験を持つ石元泰博は、戦後、繊細かつ大胆なモダニスト写真家として高い評価を得る。本作のテーマである桂離宮は、京都にある皇室関連の建築物として世界的に知られている。ニューヨーク近代美術館の桂離宮視察に同行し「桂」シリーズの撮影を開始した石元は、それまでの日本における[情緒的建築写真]とは一線を画した[意匠的建築写真]を確立した。
第4条 <15 頁>
米田知子
「藤田嗣治の眼鏡―日本出国を助けたシャーマンGHQ 民政官に送った電報を見る」
2 0 1 5

©the artist, Courtesy of ShugoArts
「記憶」と「歴史」をテーマに洗練された写真表現で世界的評価を得る米田知子。本作は、歴史に大きく翻弄された20 世紀を代表する知識人たちの眼鏡と、その人の人生において重要な鍵となる手紙や写真などを組み合わせた「見えるものと見えないもののあいだ」シリーズの1作品。藤田嗣治は第二次世界大戦の戦況悪化によってパリから日本に帰国し、終戦後「戦争協力者」として糾弾され日本を去った。作品に写された事物がまとう目に見えない物語や人物像を静かに提示する。
第5条 <17 頁>
赤瀬川原平
「復讐の形態学〈殺す前に相手をよく見る〉」
1 9 6 3

90 × 180 ㎝
名古屋市美術館所蔵 
©Genpei Akasegawa

日本を代表する前衛美術家であり、芥川賞作家としても知られる赤瀬川原平。本作は、推古天皇の摂政とされる聖徳太子が描かれた1950 年発行の千円札を200倍に拡大模写した作品。紙幣の緻密な図柄を畳1畳分の大きさに模写するという途方もない作業のため、聖徳太子の上半身の半分が未完成のままである。1965年、本作は通貨及証券模造取締法違反の疑いで起訴され、司法と芸術家が争う「千円札裁判」へと発展した。
第6条 <19 頁>
郭徳俊
「クリントンと郭」
1 9 9 3

54.6 × 41.2 ㎝
東京国立近代美術館所蔵
©KWAK Duck-Jun

「TIME」誌の表紙に掲載されたアメリカ大統領の顔と、作者の郭徳俊自身の顔を鏡で合成する「大統領シリーズ」。1974 年のフォードから始まり、新大統領就任時に作品制作を行ってきた。他に、カーター、レーガン、ブッシュ(父)、ブッシュ(子)、オバマがある。サンフランシスコ講和条約発効に伴い、日本国籍をはく奪された郭の国家・権力・メディアに対する姿勢が明示された作品。
第7条 <23 頁>
山城知佳子
「あなたの声は私の喉を通った」
2 0 0 9

7min
©Chikako Yamashiro, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

目の前でサイパン島の崖から身投げした家族の話をする証言者。山城知佳子は証言者の言葉に合わせて無声で語り、顔には証言者の映像が投影される。「証言者の言葉は私の脳裏に映像を映し出し、私のからだはスクリーン化し他者の記憶に染まった。私が見たのは証言者の体験ではなく、証言から作り出した想像の映像だった。その想像の映像は私の戦争体験となった」と山城は語る。
第8条 <25 頁>
荒神明香
「toi, toi, toi」
2 0 1 3 ( 2 0 0 2 - )

約37 × 55 × 55 ㎝
©Haruka Kojin

日常の「異空間」を再構築する荒神明香。本作は、夜道で拾い集めた事故車のガラス破片で作られたシャンデリア。青みがかった部分はフロントガラス、透明はヘッドライト、赤やオレンジはテールランプやブレーキランプの破片でできている。素材、形態、時間、場所、破壊など、異なる要素を作品素材のように扱っている。タイトルの「toi, toi, toi」は、初舞台のバレリーナにかける「いってらっしゃい」という応援の言葉。
第9条1項 <27 頁>
木村恒久
「俺の知ったことじゃない」
1 9 6 8

©Tsunehisa Kimura
日本におけるフォトモンタージュの第一人者である木村恒久は、永井一正、田中一光らとともに1950 ~80 年代のグラフィックデザインに多大な影響を及ぼした。木村のフォトモンタージュは単なる写真の切り貼りではない。素材のパース統一や写真の立体的再構成など、複雑で緻密な作品づくりは観る者を圧倒する。本作のように、簡素な要素で平面的な作品はめずらしい。
第9条2項 <29 頁>
小沢剛
「ベジタブル・ウェポン―カトゴ(野菜とバナナの煮物)-1 /ホイマ、ウガンダ」
2 0 0 8

156 × 113 ㎝
©Tsuyoshi Ozawa

「地蔵建立」「なすび画廊」「相談芸術」など、独特な活動を続ける小沢剛は、後のソーシャルアートに大きな影響を与えた。本作は、食材で銃を作り、撮影し、その銃を解体して調理し、食す、というプロジェクトの1作品。野菜などの食材でできた銃は、モデルとなった地元の女性が選んだ郷土料理の食材を組み合わせて作られている。地域、営み、文化、食、女性、戦争などのテーマがユーモラスかつ緻密に扱われている。
第10条 <31 頁>
柳幸典
「Hi-no-maru」
1 9 9 5

109.4 × 79.1 ㎝
©Yukinori Yanagi

日の丸を多様に表現する「ヒノマル・シリーズ」や、砂絵の万国旗を蟻が破壊する「ザ・ワールドフラッグ・アント・ファーム」など、民族や国家のイデオロギーを取り扱う作品を国内外で制作する柳幸典。「ヒノマル・シリーズ」の「Hi-no-maru」は、日本的制度である印鑑を捺印して日章旗を描いている(本書の掲載図版は1995 年のもの)。
第11条 <33 頁>
東松照明
「上野町から掘り出された腕時計/ 長崎国際文化会館・平野町」
1 9 6 1

©Shomei Tomatsu - INTERFACE / Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film
「占領」「長崎」などのシリーズで日本写真界を揺るがし「戦後写真の巨人」と称された東松照明。『hiroshima-nagasaki document 1961』のため長崎を初取材した際、あまりにも悲惨な被爆者の姿を目の当たりにし、「モノは撮れても、人を撮ることはできないかもしれない」 と語った東松が撮影した1枚。上野町は爆心地から約700 m離れた場所にある。
第12条 <35 頁>
畠山直哉
「Slow Glass #036」
2 0 0 1

90 × 120 ㎝
©Naoya Hatakeyama / Courtesy of Taka Ishii Gallery

「ライム・ワークス」「光のマケット」「ブラスト」など、自然、都市、写真の関係性に軸を据えた作品を制作する畠山直哉。本作は、水滴のついたガラス越しに都市風景を撮影する「Slow Glass」シリーズの1枚。シリーズタイトルは、ボブ・ショウの小説『去りにし日々、今ひとたびの幻』に登場する光の速度を遅らせるガラスから着想を得ている。無数の水滴に映り込んだ都市風景によって、光、透過、距離、速度といった、写真自体の構成要素を改めて意識させられる。
第13条 <37 頁>
高松次郎
「英語の単語」
1 9 7 0

78.5 × 54.4 ㎝
©The Estate of Jiro Takamatsu, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

日本のコンセプチャルアートに多大な影響を与えた高松次郎。代表作「影」シリーズや、日本語7文字で描かれた「日本語の文字」などと同様に、「THESE THREE WORDS(これら3つの言葉)」という3単語で描かれた本作「英語の単語」は、対象と意味との関係性・不在性を問うものである。
第14条1項 <39 頁>
やましたゆみこ
「花とこどもとおかあさん」
1 9 9 9

102 × 71.5 ㎝
©宮城まり子(ねむの木学園)

静岡県掛川市にある肢体不自由児療護施設「ねむの木学園」(女優・宮城まり子が開設)の生徒で、脳性麻痺の後遺症があるやましたゆみこの作品。ねむの木学園で絵を描きはじめ、「つくしんぼと一列」「秋の色」「世界のお家」などの大作を数多く手がけ、国内外のさまざまな展覧会に出展している。
第14条2項 <41 頁>
今井正
「また逢う日まで」
1 9 5 0

111min
写真提供:東宝

第24回キネマ旬報の日本映画ベスト・ワン作品などを受賞した名作。第二次世界大戦のさなか、裕福で文化的な一家が、全体主義・軍国主義に傾倒し3人の息子を戦争で失う。主演の久我美子と岡田英次による窓ガラス越しのキスシーンは日本映画屈指の名シーンであり、映画史だけでなく、1枚の写真として高い評価を得ている。
第16条 <45 頁>
福田美蘭
「春―翌日の朝刊一面」
2 0 1 3

227 × 181 ㎝
二戸市シビックセンター所蔵
©Miran Fukuda

美術史と名画に問いを投げかける創作を続ける福田美蘭。本作は、東日本大震災後に制作された「春、夏、秋、冬」の4 部作の「春」。「私は震災の傍観者」と言う福田は、自身の向き合い方を熟考し長い時間をかけてこの4部作を創作した。春は震災翌日の全国紙朝刊1面。夏は震災で貝殻の文様が変わってしまったアサリ。秋は狩野芳崖を、冬はゴッホを、それぞれ引用した。この見事な連作は、美術史と名画に対する福田の手つきと眼差しが、そのまま震災に向けられたかのようだ。
第17条 <47 頁>
岡﨑乾二郎
「あかさかみつけ 17」
1 9 8 7- 8 9

27.5 × 25 × 17.5 ㎝
いわき市立美術館所蔵
©Kenjiro Okazaki

平面、立体、映像、建築、景観設計、地域再生計画、批評と、きわめて広範囲に活動する岡﨑乾二郎。2019 年には『抽象の力 近代芸術の解析』で芸術選奨文部科学大臣賞(評論等部門)を受賞する。本作は、「あかさかみつけ」シリーズの1作品。作品を[見ることの装置]として捉え、形式、理念、美学をすり抜けるような創作を続ける岡﨑の代表作。
第18条 <49 頁>
ハイレッド・センター「シェルター計画」
シェルター模型(川仁宏)
1 9 6 4

20.6 × 5.6 × 3.5 ㎝
高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之らによる前衛芸術グループ「ハイレッド・センター」のイベント。改築前の東京・帝国ホテルの一室に客人を招き身体測定や撮影を行い、そのデータや模型を作品とした。オノ・ヨーコ、ナムジュン・パイク、横尾忠則らが訪れている。このイベントの後、「千円札事件」(本書17 ページ掲載作品)で起訴されたことを赤瀬川原平は知ることになる。
第19条 <51 頁>
金巻芳俊
「円環カプリス」
2 0 1 8

110 × 50 × 57 ㎝
©Yoshitoshi Kanemaki | FUMA Contemporary Tokyo | 文京アート

1 本の木材を削り出し、繊細な彩色を施した作品を生み出す金巻芳俊。本作は、一つの像が複数の顔を持つ木彫シリーズの1作品。幼年期から影響を受けたフィギュアやプラモデルや仏像の多面多臂の造形と世界観を、伝統的な木彫の技法で再構築する。タイトルにあるCaprice は、“移り気” “気まぐれ” の意味。人間のさまざまな表情が彫り出されている。
第20条1項 <53 頁>
内藤正敏
「元三大師」
1 9 6 8

50.8 × 40.6 ㎝
©内藤正敏

出羽三山での修行や羽黒山伏の入峰修行も行い、日本文化の研究論文を数多く発表している民俗学者でもある写真家の内藤正敏。代表作の一つ「即身仏」をきっかけに、内藤は主に東北地方の民間信仰を精力的に撮影してきた。早くから作品作りにストロボを取り入れ、暗闇に被写体を浮かびあがらせる、鮮烈で独特な作風を構築したことでも知られる。本作は、ストロボを使用せず、身近にあった白い紙を左手に持ち、自然の光を元三大師の瞳に集めて撮影した。元三大師と夜叉の光と闇、明と暗を見事に捉えている。
第20条2項 <55 頁>
安藤忠雄
「頭大仏殿」
2 0 1 6

©公益社団法人ふる里公苑
「光の教会」「地中美術館」「プンタ・デラ・ドガーナ」など、各地で個性的な建築を手掛ける安藤忠雄。本作、真駒内滝野霊園の参拝施設は、鎌倉のそれと同等の巨大な石像を人工の丘陵で覆ったもの。外からは頭部しか見ることができないことから「頭大仏」と命名された。訪問者は、地中のトンネルを抜けた後、頭上から光が注ぐ回廊で大仏を仰ぎ見る。光や風といった自然の断片をたよりに空間のドラマを創り出す、安藤ならではの大仏殿。
第21条 <57 頁>
宮崎学
「中央アルプス ツキノワグマ」
『森の写真動物記〈5〉 クマのすむ山』(偕成社)
2 0 0 8

©Miyazaki Manabu
北海道から沖縄まで、さまざまな動物の生態を観察し撮影する宮崎学。本作は、長野県中央アルプスのけもの道を通る野生動物を撮影するために設置した、赤外線センサとカメラを組み合わせたロボットカメラで撮影された。設置したロボットカメラが幾度となく倒されていたことから、ロボットカメラをもう1台設置し、この奇蹟の1枚の撮影に成功した。
第22条 <59 頁>
D o n ' t  F o l l o w  t h e  W i n d
「未来の入場券」
2 0 1 5 -

10.5 × 17.5 ㎝
©Don't Follow the Wind
Courtesy of Don't Follow the Wind Committee

デザイン=吉岡秀典(セプテンバーカウボーイ)

東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う帰還困難区域で行われ、現在(2019 年11 月)も開催中の国際展。封鎖が解除されるまで観にいくことはできない。立案者はChim ↑ Pom で、艾未未、アーメット・ユーグ、エヴァ & フランコ・マッテス、グランギニョル未来、小泉明郎、竹川宣彰、竹内公太、タリン・サイモン、トレヴァー・パグレン、ニコラス・ハーシュ&ホルヘ・オテロ=パイロス、宮永愛子の12 組のアーティストが、避難住民の協力の下で帰還困難区域内の建物を会場に作品展示を続けている。
第23条 <61 頁>
立石大河亞
「無題」
1 9 8 3

22 × 28 ㎝
©Tiger Tateishi Courtesy of ANOMALY

アーティスト、漫画家、絵本作家、デザイナー、画家、陶芸家などの肩書や、作家名も幾度となく変えながら、複雑で歪んだ時空・空間・文脈を混在させる作品を一貫して作り続けた立石大河亞。「とらのゆめ」「百虎奇行」など虎をモチーフにした作品を数多く手掛けた。本作は『虎の巻』の挿絵に使われたエスキース。
第24条1項 <63 頁>
エキソニモ
「キス、または二台のモニタ」
2 0 1 7

サイズ可変
©exonemo

インターネットアートを牽引するエキソニモは、千房けん輔と赤岩やえによるアートユニット。本作は2台のモニタとケーブルで構成されたミクストメディア。一見してキスシーンに見えるが、それは画面と画面を重ね合わせただけであるともいえる。画面にはさまざまな人種の男女が映し出されている。
第24条2項 <65 頁>
古橋悌二
「LOVERS」
1 9 9 4

10 × 10m
©Teiji Furuhashi

テクノロジーを巡る人間とコンピュータの関わりを表現した「pH」、ジェンダーやHIV など現代社会の切実な諸問題について正面から通り組んだ「S/N」など、先見的かつ衝撃的な作品制作を続けたダムタイプのメンバー古橋悌二。本作は古橋のソロプロジェクトで、裸の男女による、走る、歩く、抱き合うなどの映像が、コンピュータ制御による複数のプロジェクターで10 m四方の壁に投影される。
第25条 <67 頁>
オノデラユキ
「古着のポートレートNo.2」
1 9 9 4

115 × 115 ㎝
©Yuki Onodera

ビー玉を入れたカメラでの撮影や、事件をもとにしたストーリーに沿った撮影など、実験的な作品づくりで「写真とは何か」を問い続けるオノデラユキ。本作は、パリのアパートから望む空を背景に、52 点の古着を撮影したシリーズの1作品。撮影された古着はすべて、ホロコーストを原点にするクリスチャン・ボルタンスキーの“作品” であり、展覧会にて1袋10 フランで購入したもの。
第26条 <69 頁>
末永史尚
「Tangram Painting(黒板)」
2 0 1 4

60 × 60 ㎝(サイズ可変)
©Courtesy of the artist and Maki Fine Arts

素材の要素を単純化する手法により、絵画のシステムから離れ、描くことの本質を意識させる末永史尚。本作は、タングラム(正方形を7 つに切り分けたパズル)をモチーフにした、組み換え可能な可変する絵画。作品の展示場所が閉校した学校の校舎を改修したスペースであったことから、黒板を多面体パネルに落とし込んだ。
第27条 <71 頁>
浜田知明
「初年兵哀歌」銃架のかげ
1 9 5 1

20.0 × 17.5 ㎝
©Hiroko Hamada 2019 / JAA1900098

第二次世界大戦の過酷な軍隊生活を経て「戦争の残酷さ、悲惨さ、野蛮さ、愚劣さを描く」と誓った浜田知明は戦後日本を代表する版画家となった。「銃架のかげ」は「初年兵哀歌」シリーズの1作品で、芋虫のような兵士、鏡のような窓、銃剣、ロボットのような監視、タッチの異なる裸電球、など、浜田独特のユーモラスな造形でありながら、痛烈な批判精神を併せ持つ。
第28条 <73 頁>
悪魔のしるし
「搬入プロジェクト# 17 飛渡計画」
2 0 1 5

©Akumanoshirusi
劇場、美術館、学校など、さまざまな建築物にギリギリ入るよう作られた巨大な物体を搬入し、その全行程を演劇化する、悪魔のしるし(故・危口統之主催)の「搬入プロジェクト」。これまで、日本を含む世界各地22 か所でその土地の人々を搬入者として巻き込み上演されてきた。第17 回目のプロジェクトとなった本作は、新潟県十日町市旧飛渡第二小学校体育館で上演された。
第29条 <75 頁>
西野達
「mir ist seltsam zumute」
1 9 9 8

9 × 4 × 4m
©Tatzu Nishi

世界各地の屋外のモニュメント、外灯、時計台などを仮設壁で囲み、公共空間を“部屋” に変容する西野達。シンガポールのマーライオンを取り込んだ部屋はホテルとして営業され、美術界のみならず大きな話題を呼んだ。パブリックとプライベートの概念を変容するこのコンセプトによるインスタレーションは、世界中のアートイベントに招待され高い評価を得ている。
第30条 <77 頁>
五木田智央
「ショーガール」
2 0 1 3

227.3 x 181.8 ㎝
©Tomoo Gokita / Courtesy of Taka Ishii Gallery

カウズ氏(ニューヨーク)所蔵雑誌や写真からのインスピレーションと類いまれな画力により強烈な平面造形を作り上げる五木田智央。近年は、白黒色彩のペインティング作品で世界的な評価を得ており、本作のような抽象的な造形、ラフな線画、墨虹の彩色など、多彩な表現を行っている。
第31条 <79 頁>
林忠彦
「日劇屋上の踊り子」
『カストリ時代』

1 9 4 7
24.5 × 24.5 ㎝
©林忠彦作品研究室・代表林義勝

戦後、報道写真家としてカストリ雑誌等で活写していた林忠彦。彼を一躍有名にしたのが、1946 年に撮影された織田作之助、太宰治、坂口安吾の肖像写真だった。本作はその翌年、有楽町・日本劇場屋上で撮影された。のびやかな踊り子の肢体と屋上に積もる粉塵が強烈なコントラストとなり、戦後の混乱と復興が入り交じる東京を感じさせる。
第34条 <83 頁>
飴屋法水
「バ  ング  ント」
2 0 0 5

180 × 180 × 180 ㎝
©Norimizu Ameya

人間およびその生命への興味を一貫したテーマに据えて創作を続ける飴屋法水。本作は、消失をテーマにした「バ  ング  ント」展で行われたパフォーマンスの説明パネル。会期中の24 日間、180cm 四方の「暗箱」に飴屋本人が籠り、来場者との「ノック」によるコミュニケーション以外、外部との接触を一切絶った。「暗箱」には人ひとりが生存するのに必要な最小限の水や栄養剤などが持ち込まれた。
第36条 <87 頁>
赤塚不二夫
「天才バカボン」
1 9 6 7

©赤塚不二夫
常識を軽々と超越する型破りな作風で、日本漫画界を牽引してきた「ギャグの帝王」赤塚不二夫。掲載作品は、圧倒的人気を誇った「天才バカボン」に登場する名物警官。煩悩にまみれたその男は「目ン玉つながりのおまわりさん」で、何かあればすぐに拳銃をぶっ放しまくることで知られる。破壊的ながらどこか憎めないキャラクターは、世代を超えて読者に強烈なインパクトを与えた。
第38条 <91 頁>
若林奮
「港に対する攻撃Ⅰ」
1 9 6 9

12 × 13 × 47 ㎝
©WAKABAYASHI STUDIO

鉄、銅、鉛などの金属素材を用いて自然をモチーフとした彫刻を制作した若林奮。本作は、1960 年代後半に創作された「港に対する攻撃」シリーズの処女作。微妙な幾何学性で整えられた犬と緩やかな有機性が与えられた立方体、生物と幾何学図形という相反する要因が互いを侵食するという、複雑な彫刻である。
第41条 <95 頁>
濱谷浩
「終戦の日の太陽」
1 9 4 5

濱谷浩写真資料館
©片野恵介

アジアで初めて写真家集団マグナム・フォトに寄稿、ハッセルブラッド基金国際写真賞を受賞するなど国際的に評価された濱谷浩。各地に生きる人間の息吹とそれを生み出す風土を、血の通ったまなざしで記録した。本作は、1945 年8 月15 日、疎開先の新潟高田で玉音放送を聞いた後に撮影された太陽で、寺院の境内で撮影された印象的な1 枚となっている。
第44条 <99 頁>
藤井光
「日本人を演じる」
2 0 1 7

40min
©Hikaru Fujii

さまざまな国や地域固有の文化や歴史を、綿密なリサーチやフィールドワークを通じて検証し、同時代の社会課題に応答する作品を、主に映像インスタレーションとして制作している藤井光。過去と現代を創造的につなぎ、歴史や社会の不可視な領域を構造的に批評する試みを行っている。本作は、1900 年代初頭の第5回内国勧業博覧会で起こった人類館事件から発想し実施した「日本人を演じる」ワークショップの記録作品で、日産アートアワード2017 グランプリを受賞した。
第47条 <103 頁>
荒川修作
「Blank」
1 9 6 8

34 x 26 in.
©2019 Estate of Madeline Gins. Reproduced with permission of the Estate of Madeline Gins. Courtesy Gagosian.

極端な傾斜と凹凸で構築された岐阜県養老町の「養老天命反転地」で知られる荒川修作。数学、物理学、医学、哲学に精通し[ダイアグラムの絵画]を数多く手掛けてきた彼が、思考のコアに置く[blank(空白)]という概念をタイトルにした作品。妻であり作品の共同作業者であったマドリン・ギンズとともに、多方面で他の追随を許さない独特な作品を創作し続けた。
第52条 <109 頁>
水木しげる
「河童の三平」
1 9 6 9

36.4 × 25.7 ㎝
©水木プロ

太平洋戦争で左腕を失いながらも、漫画を描き続けた水木しげる。不思議な目に見えない世界を信じ、人間の幸福とは何かを追い求めた。本作は、容姿が河童に酷似している河原三平と河童のかん平が織りなす長編漫画である。三平が迷い込んだ河童の国で出会った二人は数々の冒険を重ねていく。作中には死神も登場し[生と死]が描かれ、水木の死生観が感じられる。
第53条 <111 頁>
池田一
「泥スープ」 
1 9 8 4

サイズ不定
©Ichi Ikeda Art Project

人が制御できない自然、特に水をテーマに作品を生み出す「水の芸術家」池田一。世界各地の環境アート展などで大規模な「アースアート」を発表している。「泥スープ」は、水面をピアノの鍵盤に見立てて演奏する「水ピアノ」とともに、第1回の檜枝岐パフォーマンスフェスティバルで行われた伝説の作品である。
第58条 <119 頁>
岡本信治郎
「インディアンが2人・・・・・」
1 9 6 4

190 × 130 ㎝
一般財団法人駒形十吉記念美術館(新潟県立近代美術館寄託)所蔵
©Shinjiro Okamoto

日本におけるポップ・アートのパイオニア岡本信治郎。19 世紀のフランスの画家、ジョルジュ・スーラの影響を受け、シンプルなドローイングかつ明度の高い色使いで多様な作品を創造してきた。本作は、長靴や髪飾りを身につけた10 人のインディアンが鮮やかに描かれたシリーズの1つ。岡本曰く、作品の根底にあるのは[人間疎外][集団の論理]だという。完成後、絵を野外に持ち出し、旧国立競技場、日本橋、銀座で撮影された。
第61条 <125 頁>
田中功起 
「振る舞いとしてのステイトメント(あるいは無意識のプロテスト)」
2 0 1 3

8min
©Koki Tanaka

出来事や経験の共有をテーマに、記録映像やインスタレーション、テキスト考察、トークや集会など、多種多様な探求を続ける田中功起。東日本大震災後に制作された本作は、本を持つ人々がビルの非常階段を昇り降りする模様を記録している。個々の行為に専念しながらも発生する協働性は、震災の現場で起きたであろうさまざまな事象を想起させる。
第62条 <127 頁>
豊嶋康子
「鉛筆」
1 9 9 6 - 9 9

(各)17 × 1 × 1 ㎝ (12 本組)
©Yasuko Toyoshima

安全ピン、ソロバン、鉛筆、油絵具から、株式投資、生命保険まで、既存の物や制度を見極め、人間の思考や社会と個人の関係を捉えなおす豊嶋康子。本作は、12 本の赤青鉛筆が真ん中で削られ、24 本の色鉛筆として向き合うような形で表現されている。「鉛筆を削る」というあたりまえの行為で、鉛筆の本質である実用性を無効化する本作は、豊嶋作品の原点といえるのではないだろうか。
第65条 <131 頁>
山下菊二
「射角キャンペーン5 月26 日」
1 9 6 0

155 × 124 ㎝
東京国立近代美術館所蔵
©日本画廊

戦争、差別をはじめ社会問題と真正面から対峙し、シュルレアリスムの影響を色濃く受けた大作を多数残した山下菊二。本作は、60 年安保闘争の最中、日付を入れて制作された5連作の1枚で、東京都立川市で起こった米軍基地拡張反対闘争である砂川事件をモチーフとした[ルポルタージュ絵画]である。
第66条 <133 頁>
秋山祐徳太子
「虚ろな将軍たち」
1 9 7 3

78 × 34 × 32 ㎝、48 × 24 × 25 ㎝、44 × 20 × 17 ㎝、44 × 20 × 19 ㎝、32 × 21 × 22 ㎝
©Yutokutaishi Akiyama

反芸術、ハプニングパフォーマンスで知られる美術家の秋山祐徳太子。1970 年代に東京都知事選挙に出馬したことでも知られる。本作は、72 年以降本格的に制作されたブリキ彫刻シリーズの1作品。正確にはブリキではなくトタン板を錫ハンダで溶接している。他に、男爵、聖母、仏、バッタなどがある。
第68条 <137 頁>
望月正夫
中継「ようこそエリザベス女王来日」
『Television 1975-1976』(スナップ社)
1 9 7 5

©Itsuko Mochizuki
2001 年に刊行された望月正夫の作品集『Television』は世界から注目を集めた。「Television」シリーズは、テレビ画面35 カットを1枚のフィルムに収めている。コンピュータもヴィデオもない時代に望月は、ファインダーに分割線を引き、1画面撮影してはカメラを移動させ多重露光を繰り返し撮影する方法で42作品を残した。
第69条 <139 頁>
村上三郎
作品「6 ツの穴」
第1 回具体美術展(小原会館、東京)
1 9 5 5

約181.8 × 259.1 ㎝
©Tomohiko Murakami
Courtesy of the Estate of Saburo Murakami and ARTCOURT Gallery

木枠に貼られたクラフト紙を全身で突き破る「紙破り」は、襖を破って部屋に入ってきた息子を見て考案した村上三郎の代表作となった。本作「6ツの穴」は「紙破り」の痕跡を作品として展示したもので、日本のパフォーマンスの先駆として、また、絵画の枠組みを解体した作品として高い評価を得ている。突破、破壊といった根源的魅力を持つ「紙破り」は、作者の没後もたびたび再演されている。
第72条 <143 頁>
花代
「Untitled」 
2 0 0 3

©Hanayo / Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film
芸妓、モデル、女優、歌手、パフォーマー、写真家、アーティストとして多方面で活躍し、自身の日常を幻想的な色彩で切り取る写真やコラージュ、またこれらに音楽や立体表現を加えたインスタレーションを発表している花代。本作は、花代の作品において長らく中心的な位置を占めてきた愛娘・点子の幼い頃を写した1枚。
第73条 <147 頁>
毛利悠子
「モレモレ:ヴァリエーションズ」
2 0 1 8

サイズ可変
©Yuko Mohri

光、重力、磁力など、不可視な素材で制作をする毛利悠子。駅構内の水漏れ処置の現場を写真に収めるプロジェクト「モレモレ東京:フィールドワーク」から派生した本作は、美術館での初個展にあたる青森県十和田市現代美術館〈ただし抵抗はあるものとする〉のサテライト会場で制作された。
第74条 <149 頁>
宇川直宏
「UKAWA'S TAGZ FACTORY!!!」
ドナルドダック、デイジーダック、グーフィー、プルート、チップ&デール、
くまのプー(ディズニーキャラクター〉
2 0 0 8 -2 0 1 4

24 × 27 ㎝
©Naohiro Ukawa Courtesy of ANOMALY

ファイナル・メディア「DOMMUNE」など、超人的守備範囲の活動で知られる宇川直宏。本作は、古今東西、世界中のセレブリティ1000 人以上を憑依させ、彼ら自身のサインのように生み出してきた作品。[リアル]と[フェイク]の融合の先には、人類未体験の価値が創出されている。この「憑依サイン」は20 年以上継続して描かれ、横尾忠則をはじめ、ウルトラセブン、夏目漱石、ヘレン・ケラー、アインシュタインなど脈絡のないセレクションで今も無数に書写され続けている。
第75条 <151 頁>
C h i m↑P o m
「The Grounds」 
2 0 1 7

55 × 55 ㎝
©Courtesy of the artist, ANOMALY and MUJIN-TO Production

「SUPER RAT」「ヒロシマの空をピカッとさせる」「また明日も観てくれるかな?」など、現代社会に介入する作品を次々と発表するChim↑Pom。本作は、メンバーのエリイが、不当な理由で入国が認められていないアメリカの地に、合法的に足を踏み入れるというプロジェクト。写真は、地中に刺さった国境壁の真下の、どちらの領土ともいえないところまで穴を掘り、メキシコ側から印したエリイの足跡。
第78条 <157 頁>
山本昌男
「tori」
2 0 1 5

©YAMAMOTO Masao Courtesy Mizuma Art Gallery
日本の精神性と美を凝縮した写真で世界的評価を得る山本昌男。本作は、その名の通り「鳥」をテーマにした連作で、自然と人間は対峙する関係ではなく人間は果てしない宇宙の一部でしかない、という思想を表現した1枚。森閑として清らかな雰囲気をまとう写真は、宇宙とリンクするような無限の奥行きを感じさせる。
第81条 <165 頁>
合田佐和子
「セルジュ・リファール」 
1 9 7 5

60.6 × 50.0 ㎝
©Sawako Goda

色彩と光が融合する表現で多様なメディアで活躍した合田佐和子。本作は、フランスの天才バレエダンサー、振付師のセルジュ・リファールを描いた油彩画で、古いブロマイドや写真をもとに映画スターをはじめさまざまな人物を描いたポートレートのシリーズの1作品。「眼」の表現で知られる合田作品の中でも一際異彩を放つ。
第83条 <169 頁>
関根美夫
「No.403」
1 9 7 5

65.2 × 53.2 ㎝
©Estate of Yoshio Sekine

「算盤」「貨車」「門」に代表される具体的な像を持つものを、抽象的に表す作品で知られる関根美夫。本作は、1960 年代からライフワークとして描き続けた算盤シリーズの1 枚で、ジャスパー・ジョーンズの「標的」に触発され平面的なモチーフを追い続けた関根の代表作となった。
第84条 <171 頁>
若江漢字
「見る事と視える事―72(レンガ)」
1 9 7 2

65 × 40 ㎝
©Kanji Wakae, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

1970 年代の現代美術における写真が[記録]でしかないと指摘する若江漢字は、[学習としての写真、写真の発見]をテーマに表現を続ける。本作は、事物の[視かた]や[見えかた]など、人の視覚に関する問題に着目した「見る事と視える事」シリーズの1枚。存在と認識の関係性を浮き彫りにした若江の写真作品は海外でも高い評価を得ている。
第87条 <175 頁>
楳図かずお
「ロマンスの神様」
1 9 6 4

©Kazuo Umezz
『まことちゃん』をはじめ、不世出の独自性を持つ傑作を世に出してきた楳図かずお。『ロマンスの神様』は初期楳図作品で、青春ラブコメの金字塔である。掲載作は扉絵に使われた1枚で、完璧な構図、一瞬が永遠でもあるような不定形な少女の時間が塗り込められた瞳など、100 年後の遠い未来にあっても、普遍的で根源的な絵画性を感じる1枚。主人公紅陽子の憂鬱顔には、慈悲、意思、愛、葛藤、打算といった本作テーマのほぼすべてが内包されている。
第88条 <177 頁>
伊奈英次
「古市高屋丘陵」 安閑天皇の陵
2 0 0 0

16 × 20in.
©Eiji Ina

8 × 10 インチの大型カメラを駆使し、「東京」「産業廃棄物」「奇岩」などのテーマに向き合い続ける伊奈英次。本作は、7年の歳月をかけ、すべての天皇陵を写真に収めた「Emperor of Japan」シリーズの1作品。伊奈の卓越した撮影技術が、神武天皇から昭和天皇までの陵の膨大な時間を細部まで写し撮る。古市高屋丘陵は、大阪府羽曳野市にあり、百舌鳥・古市古墳群に属する前方後円墳である。
第91条 <181 頁>
宮本茂
「スーパーマリオブラザーズ」 

1 9 8 5

©1985 Nintendo
世界中で広く親しまれている「スーパーマリオブラザーズ」。生みの親である宮本茂は、2019 年11 月現在、任天堂代表取締役フェローを務める。ゲーム概念を更新する大胆さと、1ピクセル1フレームレベルで調整された緻密さが同居する宮本のゲームデザインは、世界にそれまで存在しなかったまったく新しい時間と空間を提供した。

第92条 <183 頁>

新潟現代美術家集団G U N 

「雪のイメージを変えるイベント」

新潟県十日町市 信濃川河川敷

1 9 7 0
©羽永光利
1960 年代後半、前山忠、市橋哲夫、堀川紀夫等によって結成された前衛美術グループの新潟現代美術家集団GUN。新潟の雪面に赤・青・黄・緑の顔料を農業用噴霧機で撒いた本作は、日本初の大規模ランド・アートとして評価されている。前衛芸術、舞踏の写真家である羽永光利との協働的プロジェクト。
第93条 <185 頁>
楢橋朝子
「Makuhari」
シリーズ half awake and half asleep in the water より
2 0 0 1

135 × 90 ㎝
©Narahashi Asako

自然と文明の境界面に独特な眼差しを向ける楢橋朝子。本作は、世界各地で陸と海の境界線を撮影したシリーズの1枚。作者が水中に浮遊しながら撮影する本シリーズは、船舶、建築物、海岸線、街並みといった人間の文明を、まるで他の星での出来事であるかのように捉える。
第94条 <187 頁>
篠山紀信
「北海道苫小牧勇払」
『家』(潮出版社)
1 9 7 5

©Kishin Shinoyama
ジョン・レノン、オノ・ヨーコに代表される大スターのポートレート、グラビア、ヌード写真で知られる篠山紀信。本作は、1975 年に出版された写真集『家』の1枚。住人を排した家だけを切り取った写真が、地域と住居、家という空間、人の営みを雄弁に語る。
第95条 <189 頁>
風間サチコ
「RINKAI・沼・90」
2 0 0 9

80.3 × 80.3 ㎝
©Courtesy of MUJIN-TO Production

今の出来事を過去の事柄から徹底的にリサーチし、私たちの行く先に生じる波乱を見通すような作品を生み出す風間サチコ。彼女は、伝統的手法を使い、漫画表現を下敷きにした唯一無二の黒の木版画を創り上げる。本作のテーマはバブル期の頓挫で、大手ゼネコンの未来予想図、高速増殖炉もんじゅ等が描かれている。
第96条1項 <191 頁>
植田正治
「無題」
シリーズ「小さい伝記」より
1 9 7 5

28.8 × 25.6 ㎝
©Shoji Ueda

自然を背景に被写体をオブジェのように構成する作風が、写真誕生の地フランスでUeda-cho( 植田調) と称され世界に評価されている。本作は、1974 年から12 年間、『カメラ毎日』に連載されたシリーズ「小さい伝記」からの1枚。カメラを介して人々などの自然な姿が描かれている。
第96条2項 <193 頁>
O  J U N
「飛び立つ鳩に、驚く私」
2 0 1 5

75 × 75 × 5 ㎝
©O JUN Courtesy Mizuma Art Gallery

日本地図の上に子供が置いたクラッカーをそのままの構図で作品にするなど、身の回りの出来事を独特な創作に落とし込むO JUN。本作は、自宅のドアを開けた瞬間に「鳩が飛び立って驚いた」、そのことを作品にしたものである。その後、クレヨン、鉛筆、油彩、水彩、版画など多様なマテリアルを使用し100 点以上のシリーズ作品がつくられている。
第97条 <195 頁>
会田誠 
「あぜ道」
1 9 9 1

73 × 52 ㎝
豊田市美術館所蔵
©AIDA Makoto Courtesy Mizuma Art Gallery

美少女、戦争画、サラリーマンなど、社会・風俗・歴史の境界を痛烈な批評性で提示する作風が幅広い世代から支持を得ている会田誠。本作は、日本を代表する画家、東山魁夷の「道」へのオマージュと言われており、後の会田作品における重要なモチーフとなる女子高生と融合されている。
第98条 <197 頁>
長谷川潔
「薔薇と封書」
1 9 5 9

26.2 × 30 ㎝
古い銅版画技法のメゾチントを復活させ、唯一無二といわれる版画を多数遺し世界的な評価を得た長谷川潔。本作「薔薇と封書」は、長谷川のメゾチントの代表作として知られる。サロン・ドートンヌ所属、フランス文化勲章受章、第二次世界大戦中の収容所生活など、長谷川が人生の大半を過ごしたパリの住所に宛てられた夫人への手紙。その上に静かに置かれた薔薇と鍵は「愛」と「忠誠」を示している。
第99条 <199 頁>
石川竜一
「沖縄県北谷町」
『絶景のポリフォニー』(赤々舎)
2 0 1 4

©Ryuichi Ishikawa
日常風景や人々の暮らしを写した名作は数々あるが、石川竜一が地元沖縄で撮影した『絶景のポリフォニー』は、過去の名作たちを「これまでの」とくくりたくなる写真集だ。被写体との距離、生活に対する皮膚感覚、眼差しでなく把握、といった評価はこれまでの名作にも当てはまる。石川の写真には石川が写りこむ。彼の記憶に深く焼き付いた像が、念写のように被写体と同化する。

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